「ウブねぇ♪反応が面白い」
鴇田組でも組員はちやほやしてくれるけど、龍崎組の方が面白い♪
良いストレス発散になってあたしは大本命の響輔の部屋の襖を開けた。
「ハッロ~♪」
ご機嫌に登場するも、響輔は一人折りたたみ式のテーブルの上で何かに取り掛かってる最中。
テーブルの上にはたくさんの本が置かれてレポート用紙が散らばり、手にはペン。
しかも
はじめて見る響輔のメガネ姿!かっこいいし!似合ってるし!
響輔は黒縁のメガネの向こうで切れ長の目をぱちぱち。
だけどあたしの登場を見ないフリしてるのか、ちょっとメガネのブリッジを直すと、
またもテーブルに広げたレポート用紙に取り掛かる。
「ちょっとぉ!あたしの存在無視!?」
襖を閉めて響輔の元に歩いて行っても響輔は顔を上げようとしない。
「声も聞こえて無いの?」
あたしは黙々とレポート用紙に向かう響輔にぎゅっと抱きつくと、
「………嘘や、と言うてほしい」とようやく低くぼそり。
「“嘘や”ないわよ?何してるの?」
響輔の首に抱きついたままあたしはテーブルに載せられた本を見ると、あたしには見たこともない記号や英語…なんだろう。文字の羅列がつらつら。
何だか難しそうね。
「ドイツ語や。大学のレポートやってんねん。だから邪魔せんといて」
響輔は鬱陶しそうにそっけなく言って、でも振り払おうとはしない。
それをいいことにあたしはさらにぎゅっと抱きしめて、響輔の頬にキス。
「……何の嫌がらせなん?」
響輔は泣きそうな声でちょっと身をよじった。



