「あの……おばちゃんの実家ってどこなんですか?」
あたしはおずおずと聞いてみた。
「実家?盛岡の方だけど」
「モリオカって……どこ?」こそっとリコに聞いてみると、
「岩手県だよ」とリコがちょっと呆れたように白い目。
「あ、あはは~。そのモリオカじゃ白へびさまは有名なんですか??」
「さぁ。うちの実家の近くだけじゃないかしら。
小さな町…と言うほどでもないんだけれどね、特産物なんか特に何もないところよ。ただ冬になると雪だけはやたらと多くてね~
地元じゃ青女(セイジョ)と言ってねぇ、雪を降らせる女神のことを例えてるのよ。それが白へびに形を変えたんだって言い伝えがあるの」
雪を降らせる女神―――…
「へぇ、何かロマンチック」
リコがまばたきを繰り返して、まぁある意味ロマンチックだけどな。と考えながらあたしは現実的な話しへと思考を切り替えた。
「あ、あの…その地域で玄蛇って苗字の人って居ませんか?」
あたしは質問してみた。
「ゲンジャ?何それ」と千里が怪訝そうに首を捻って。
「さぁ聞いたことないわね」千里ママも考えるように頬に手を当てている。
まぁそんなに簡単には見つからないか……
「じゃ、じゃぁタイガって苗字は“大きい”に“狼”って書いてタイガって言うんですけど」
またも聞いてみると、
「さぁ、知らないわね」と千里ママは眉を寄せる。
「お前さっきから変だぜ?何だよゲンジャだとかタイガとか」
千里に突っ込まれてあたしは曖昧に笑ってごまかした。
「朔羅、あの変な人がどうかしたの?」
リコも不思議そうに目をぱちぱち。
まぁ“変”てのは否めないけどな。
やっぱそう簡単にはいかのするめ焼きって感じか。



