「大方、女を俺に奪われたとか逆恨みだろ?
残念だけどそれは違うね。
俺は龍崎 朔羅と付き合ってるからな」
龍崎くんはちょっとドスを含ませた声で青山くんに聞いた。
「あ、あの二人はそうだ。だけど俺は違う!俺は川上さんがっ!!」
青山くんは顔を青ざめさせてまた一歩身を後退させる。
龍崎くんは器用に片方の眉をちょっとだけ吊り上げて、
「あー、おたく川上が俺を好きだと勘違いしたわけ?」
「…か…勘違い…?」
あたしは龍崎くんを見上げた。
「それとも何。俺が朔羅と川上二股掛けてると思ったわけ?」
「ち、違うのかよ!」
青山くんが怒鳴り返して、龍崎くんは呆れたように「ちっ」舌打ちした。
ふ、二股ぁ!?
…ま、まぁ確かに…龍崎くん女の子には誰にも優しいし、あたしたちの前後の会話を聞いてたらそう思うかも…
でもこんな人好きじゃないもん!(今は)
「ちげぇって。俺の彼女は一人。朔羅だけだ。
それにこいつの好きなヤツは俺じゃなくて違う男。
同じ高校のヤツじゃないから残念だったな」
「違う―――…男…?」
青山くんは目をぱちぱちさせてあたしたちを見てきた。
「そ、そうだよ。あたしが好きなのはこんなチャラいひとじゃないもん。
大人で優しくて爽やかで上品で…」
途中まで言って
「おい!俺は大人で優しくて爽やかで上品じゃないんかよ!」
龍崎くんが口を挟んできた。
「そのとーりじゃない。龍崎くんより響輔さんの方が数倍ステキだもん!」
「なにぉう!」
あたしたちが言い合いをしていると
「……俺の…勘違い…?俺はてっきり川上さんが龍崎に弄ばれてるかと思って…」
青山くんは力なくへなへなと床に座り込んだ。
青山くん―――…あたしのこと…心配してくれたんだ…
でも
「龍崎くんは軽そうに見えるかも…だけど、イタズラに女の子の気持ちを弄ぶような人じゃないよ。
すごく一途に一人の人を想って、守って―――
すごく優しい人なの」
あたしが青山くんの元に歩み寄って言うと、
「でも青山くんも同じだね。あたしのこと心配してくれて。
ありがとう。
でもごめんね。あたしが好きな人―――
龍崎くんの幼馴染なんだ。
その人のこと凄く好きなの。
ごめんなさい」
真正面から頭を下げると、青山くんがゆっくりと立ち上がった。



