。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。







「タチバナって誰や」


戒が目を細めて、「このタイミングで新キャラかよ」とキョウスケの方を見ている。


「さぁ俺もちらっとしか見てないんで…はっきりとは」


「あいつがあのチンピラたちを雇ったに違いねぇ!


何か胡散臭いヤツなんだよ!!


どこにでも現れるし」


あたしはフライ返しをブンブン振り回して腰に手を当てた。


戒はきょとんとしてキョウスケを再び見たけれど、キョウスケも肩を竦めるだけだ。


「そのタチバナって…男?」


「男ですよ。背が高くて年齢は二十後半ぐらいだったかな」


キョウスケが思い出すように宙を見て呟いた。


「お前は何でその男のこと知ってたんだよ」


戒が目をぱちぱちさせて、


「前にちらっと言ったじゃん!あたしのお部屋にお前が来たとき!


お前はその話題そっちのけで


あたしに迫ってきただろ!」


思わず勢い込むと、キョウスケが白い目で戒を見据え、


「戒さん、お嬢のお部屋で不純異性交遊はダメですよ」


とドスを含ませた声で釘を差す。


「なんっ!ちょっとチューを迫っただけやん!」


「それが不純異性交遊だっつうの!」


珍しくキョウスケが怒ったように口調を荒げて鉄拳を戒に食らわせようとするも、戒はそれをあっさり避けて苦笑い。


「まぁまぁ、あのときのあれはおいといて~」


「おいとけるかぁ」


キョウスケは戒の頭をバシっとはたいた。


「痛てっ!響ちゃん、暴力反対~!!」と、戒がさっとあたしの背後に隠れる。


まったく。おめぇは何であたしの緊張感をいつも緩めるんだよ!


ため息を吐いて後ろを振り返ると、




「前でファミレスで会ったんだよ。


彩芽さんと一緒に来てた。向こうは仕事の打ち合わせって感じだったけど。




彩芽さんのクラブの共同経営者って言ってた」






あたしが報告すると、戒はまたもオフザケから一転、真剣な表情で目を開いた。