。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。




「タイガが白へび?何で?」
「大狼さんが白へび?何でですか?」


二人同時に聞かれて、あたしは慌てて手を振った。


「や!あいつ、白へびは守り神だって知ってたし…」


「それだけで、か?」


戒が目を細めて腕を組んだから、あたしは思わず顎を引いた。


物理的な根拠はないよ。あたしの勘だけど…





「あー…それと…


あいつって妹居たって知ってた?



あいつの妹、叔父貴の秘書のキリさんじゃないかって気がするんだけど…」






「「は―――……?」」



またも二人同時に聞かれて、あたしは今度こそブンブン手を振った。


「いや!ホントに根拠のない勘だからっっ!!」


夢で見た……あの小さな女の子…


『お兄ちゃん』の手を引いてこちらを振り返った女の子は、キリさんと同じ位置にほくろがあった。


それだけで妹って決め付けるわけにはいかないし、そもそも『お兄ちゃん』がタイガなのかどうかも分からない。


タイガから「妹がいる」って聞いたばっかりで、それで夢で見ちまっただけかもしれないし…


それでも二人とも口元に手をやったまま黙り込んだ。


床の一点を睨むように凝視している。


「す、すみません!!!今言ったことは気にしないでっ!


ドレミファ空耳ってことで!」


あたしが慌てて手を振ると、


「なんだよ、ドレミファ空耳って」


戒が緊張をほぐしたように無邪気に笑う。



それにちょっと安心してあたしは胸を撫で下ろした。


話題を変えるように、何でもなく笑って、


「タイガって言えばさ、あいつあんなへらへらしってっけど、たぶん…ってか間違いなく相当強ぇえよ?


変態のくせに。あれはフリか??」


と、言って菜ばしを動かす。


「フリかもしれないですね。俺もすぐ近くでちょっとだけ見ましたが、かなり場数をこなしている感じではあります」


そっか。キョウスケはあの高架下まで駆けつけてくれたしね。


あのとき襲ってきた男達は、金で雇われたって言ってた。


その男達を雇ったのって―――…やっぱ玄蛇…スネークなんだろうか…






サラリーマン風の若い男…









あのときのことを思い出して、あたしはまた目をまばたいた。







「タチバナ―――……」