「タイガが白へび?何で?」
「大狼さんが白へび?何でですか?」
二人同時に聞かれて、あたしは慌てて手を振った。
「や!あいつ、白へびは守り神だって知ってたし…」
「それだけで、か?」
戒が目を細めて腕を組んだから、あたしは思わず顎を引いた。
物理的な根拠はないよ。あたしの勘だけど…
「あー…それと…
あいつって妹居たって知ってた?
あいつの妹、叔父貴の秘書のキリさんじゃないかって気がするんだけど…」
「「は―――……?」」
またも二人同時に聞かれて、あたしは今度こそブンブン手を振った。
「いや!ホントに根拠のない勘だからっっ!!」
夢で見た……あの小さな女の子…
『お兄ちゃん』の手を引いてこちらを振り返った女の子は、キリさんと同じ位置にほくろがあった。
それだけで妹って決め付けるわけにはいかないし、そもそも『お兄ちゃん』がタイガなのかどうかも分からない。
タイガから「妹がいる」って聞いたばっかりで、それで夢で見ちまっただけかもしれないし…
それでも二人とも口元に手をやったまま黙り込んだ。
床の一点を睨むように凝視している。
「す、すみません!!!今言ったことは気にしないでっ!
ドレミファ空耳ってことで!」
あたしが慌てて手を振ると、
「なんだよ、ドレミファ空耳って」
戒が緊張をほぐしたように無邪気に笑う。
それにちょっと安心してあたしは胸を撫で下ろした。
話題を変えるように、何でもなく笑って、
「タイガって言えばさ、あいつあんなへらへらしってっけど、たぶん…ってか間違いなく相当強ぇえよ?
変態のくせに。あれはフリか??」
と、言って菜ばしを動かす。
「フリかもしれないですね。俺もすぐ近くでちょっとだけ見ましたが、かなり場数をこなしている感じではあります」
そっか。キョウスケはあの高架下まで駆けつけてくれたしね。
あのとき襲ってきた男達は、金で雇われたって言ってた。
その男達を雇ったのって―――…やっぱ玄蛇…スネークなんだろうか…
サラリーマン風の若い男…
…
あのときのことを思い出して、あたしはまた目をまばたいた。
「タチバナ―――……」



