「とにかく、あの日あの夜―――外は冷たい雨が降ってて…」
キョウスケ…詩人??何だよその物憂げな台詞は。
なんて、シリアスに成りきれないあたしがキョウスケを見上げて訝しそうに見たが、
「次の日俺が熱を出した日です。覚えてます?」
急に振り向かれて、今度はあたしの方がぎこちなく頷く。
覚えてるも何も……あの晩は、あたしがキョウスケの告白を断った日だったから―――
あの日あの夜―――
「その日に接触したヤツらの中に恐らくイチの協力者なる人物がおった。
あのときはまだ、イチが何もんか探れてなくて……てか今もはっきりした正体分からへんけどな、
協力者ってだけでそれほど重要視もしてなかった。
ピアスを響輔が持ってるなんて嘘ついて、鴇田を怒らせたのもそいつの入れ知恵に違いない」
ピアス―――…そう言えば、鴇田はあのとき珍しく余裕がなかった。
「まぁその件はおいおい。あのとき一結が俺たちの命を狙っていたのは事実です」
「俺たちは早々にイチが雇ったんがプロやと言うことに気付いた。
御園医院での狙撃や」
確かに―――…あのときの狙撃はプロの仕業だとしか思えない―――……
「ヤラセやないて言うことがここでも証明される。
スネークは仲間と群れない。ヤラセやったら病院側にもヤツの協力者が居るはずやからな」
「……そっか…」
あたしは目をまばたいて、戒を見上げた。
戒の説明は分かりやすかった。このおバカなあたしでも理解できるぐらい。
それと同時に驚きを隠せなかった。
開いた目が乾いて痛いぐらいだった。
一つ、一つ―――まるで点が線になっていくように―――繋がっていく。
「ってことはだ、あの病院に居たあたしたち三人は当然、
鴇田もスネークから外れるよな」
あたしはあのときに居たメンバーを思い浮かべて指を折った。
「またまた消去法で考えると、物理的に女には無理や。
身長はそこそこあるけど、あのほっそい腕のイチには無理」
戒はキョウスケの方を目配せすると、キョウスケは無言で肩を竦めた。
「そして琢磨さんの秘書のキリさんも消える。
あの人は極道と関わってる言うても頭はいいが、場慣れしてる感じはしいへんし。
俺と琢磨さんの喧嘩のときに気付いた。ほとんどカタギやと言っていいぐらい。
そうなるとキリさんも消える」
どうしてそこでキリさんが出てくるのか謎だったけれど、あたしはとりあえず戒の考えを聞くことにした。
「そして最後大本命、ドクターの女、彩芽さん―――
あの女にも無理や」



