「前にイチには男の協力者が居る言うたよな。あれ、たぶんスネークのことや。
ほぼ間違いないで」
戒もキョウスケの反対側で真剣な表情を作り、腕を組んだ。
あたしは温まったフライパンに油を入れてた最中だけど、
その言葉を聞いて
油の容器から必要以上にドボドボとフライパン内に注いでいたことにも気付かなかった。
「お嬢、入れすぎじゃありませんか?」
キョウスケに指摘されて、
「わ。ヤベ!」慌ててフライパンを傾け、油用のステンレスポットに中身を戻した。
「ど…どうして……そんなことが分かったの…」
ステンレスポットに油を戻している最中、あたしの声と指先が僅かに震えていた。
プロの殺し屋を雇ったってことは本気であたしたちを殺す気で……?
あたしたちがイチに何の恨みをかってるんてんだ…
そんなことをぶつぶつ考えてると、
「危ねぇって。おめぇ火傷するぜ?
俺がやるからお前新しいフライパン出せよ」
と、油の入ったフライパンを戒が奪っていき、でもその口調は優しかった。
あたしは戒に言われたまま大人しく戸棚からフライパンを取り出す。
「まー、最初は俺らもイチの共犯者が単なる男だとしか思ってなかったケド、
でも響輔がイチとカーチェイスをした次の日に」
戒はそこまで言って言葉を飲み込んだ。
カーチェイス??イチと…?
「てかお前そんなことしてたんかよ!
ってか戒!おめぇも知ってたんかよ!」
思わず二人に勢い込むと、二人ともわずかにたじろいであたしからちょっと離れた。殺虫剤をまかれたゴキブリみてぇな動きだ。
「ま、まぁこれには色々事情がありまして…」
「す、すまん…」
「あんま危ねぇことすんなよ!」
あたしが目を吊り上げて怒鳴ると、戒とキョウスケは顔を見合わせて目をぱちぱち。それでもすぐに頬を緩めた。
何だよ、おめぇら怒られてるってのに笑ってんじゃねぇよ。二人ともドMか!
心の中で思わずそう突っ込むも、
「ご心配ありがとうございます。以後気をつけます」キョウスケがちょっとだけ頭を下げて、反省。
でも次に顔をあげたときはさっきと同じ真剣な表情が浮かんでいた。



