キョウスケも顔色を悪くして、だけど「それは嘘だと思いますけどね」とぱっと顔を背ける。
キョウスケ…認めたくない気持ちは分かるがな。それは変えようもない事実なんだぜ?
いい加減諦めろ。想われるだけならただだ?
なんてあたしは他人事。(自分だって当事者のくせに)
「ところで厄介なことって何でぃ」
二人はあたしの言葉に揃って俯いて口を噤んだ。
なんでぃ!早く言いやがれってんだ!!
あたしは戒をちょっと押しやってコンロに火をかけた。
「戒、おめぇ手伝わねぇんならどけ。
そんでもってキョウスケ、お前はホットケーキ焼け。あたしはつまみ作ってるから」
相変わらずな暴君っぷりを発揮して、外に出たら女の人たちからキャーキャー言われるだろうイケメン二人を顎で使うあたし。
「ホットケーキ…焼いたことないですけど、チャレンジしてみます」
いつになく積極的なキョウスケが話を中断してフライパンを手に、あたしの横に来た。
隣に並んだキョウスケはちょっと戒の方を振り返って…
あかんべ。
「羨ましいでしょ、戒さん」
「キョスウケ!おめぇも挑発すな!!」
「響輔っ!てめ!!あのことバラされたくなけりゃ今すぐそこを離れろ!」
その挑発にあっさりと乗りやがった戒は、キョウスケを指差してあたしの横に摺り寄ってきた。
あのこと…って、もう今更キョウスケの武勇伝なんて教えてくれなくていいよ。
大概くだらないことだしな。(本人たちは必死だろうけど)
「聞いてよ、朔羅さ~ん、この人ねぇ…」
メガネの声で戒がにこにこあたしを覗き込んできて、
だけど戒が次の言葉を言う前にあたしの後ろから伸びてきたキョウスケの手に首根っこをつかまれ引き剥がされてる。
「話が脱線してます」
キョウスケは戒を冷たく睨むと、すぐに真剣な表情でフライパンの柄を握り、
「厄介なことって言うのは―――
スネークを雇ったのが、どうやら
一結だと言うことです」
ひどく真面目な顔つきで…いや、こいつは戒と違っていつも真面目だけどね…
一言呟いた言葉に―――
あたしは目を開いた。



