戒は灰で小さくなったタバコをシンク内の三角コーナーに投げ捨て、水を流した。
ザー…と言う音に混じって、またも戒がゆっくりと言葉を選ぶように口を開く。
「とにかく、あのとき胃炎で入院したときの一件は琢磨さんの仕業だけやないと考えると、
もう一組は誰か?
消去法でいって俺たちを狙ってる“玄蛇”ってたことになる」
―――叔父貴…だけじゃなかった―――
―――…ってことは、
スネークは、タイガ……?
あたしが目を開いてまばたきを繰り返すと、
戒がちょっとだけ目を細めてため息を吐いた。
「ってことは、あのときからスネークは俺達のたま(命)を狙ってわけだ。
だけど、スネークに仲間はいないらしい。一族の生き残りはあいつ一人。
群れをなさない殺し屋はいつも単独で獲物をしとめるらしいからな」
「今回だけ仲間を募ったと言うことも予想ができますが、それも可能性が低いでしょうね。
何せヤツは正体を知られたら商売あがったりですから」
「だな。例外ってのは考えないほうがいい。
今度は自分が獲物になる可能性もあるしな。殺しなんて稼業にしてると、方々で恨みを買っててもおかしくないしな」
「周到なヤツですよ。その問題に関しては慎重になってる。そう簡単にシッポはつかめそうにないですね」
キョウスケもため息を吐いて額に手を置いた。
まさに今回は三人とも(あたしは元々)『お手上げ』って感じだ。
「まぁ急性胃炎で入院したときの、あの騒動は琢磨さんだけじゃなかったとして結論付けて、
次の問題にいこうぜ」
「次?」
あたしが目をまばたくと、戒はキョウスケの方をちらりと見て、キョウスケは口元を引き締めてあたしの方を見てきた。
「その問題と言うのがちょっと厄介でして」
いつになく歯切れの悪い物言いに、
「何だよ。変態タイガがお前らにお熱、結婚したがってるって言う事実より厄介なんかよ」
あたしがイライラと言うと、
「それは確かにものすごぉ~~~、厄介な問題やな」
と戒が深々とため息を吐いてうな垂れた。



