「話をだいぶ遡らせると、俺が急性胃炎で御園に入院した日まで」
さっきのオフザケから一転、戒がタバコの煙を吐き出しながら腕を組んでちらりとキョウスケを見る。
キョウスケは戒の気持ちを代弁するように僅かに手を挙げて説明。
「あのとき襲ってきた男は見覚えのない男でした。
手の甲にタトゥーがあるだけで、それ以外何の特徴もない男」
「そいつがどこの組に属してるのか、或いは極道じゃないのか、誰かに雇われたのかは一切不明」
戒が口元を引き締めて僅かに視線を険しくさせる。
「俺は龍崎 琢磨の仕業やと思った。おかんもグルになってな」
「もしかしたらそれもあるかもしれませんね。
偶然あの場に、放たれた刺客が二組居たってことも考えられます」
「問題は二組居たかどうかやない。
朔羅…お前がタイガの腕にそのタトゥーを見たとなると…」
戒はそこまで言うと考えるように口元を覆った。
「俺たちが想像した事態は大幅に変わってきます」
キョウスケがそのあとを継いで、あたしは目をぱちぱち。
「た、タイガが……叔父貴に雇われたかも…って、その男がタイガの仲間とか考えないの?」
探るように目を上げると、
「まぁ病院で襲ってきたのが大狼さんの仲間だと言うことは考えられますけどね、
果たしてその大元の大狼さんが会長に雇われたかと言えば、その可能性はNoに等しいでしょうね」
と何の根拠があって言ってるのか分からないけれど、キョウスケははっきりキッパリ。
これ以上何か理由を聞こうとしても、きっと無理だろうな。
ってか聞いてもあたしには分からないだろうな…
諦めてあたしは話題を変えた。
「じゃあさ、やっぱり胃炎のとき病院で襲ってきたのはあの変態タイガの仲間の仕業だとして、
それを考えるとやっぱあいつって敵なの?」
悪いヤツには思えなかったんだけどな―――
あたしはやっぱりスネークは鴇田としか思えないぜ。あの陰険鴇田め!
でも、タイガのあの雰囲気は、そう見せかけだけかもしれないし。



