「つか、アホ言うな!それがヤラセかもっておめぇだってちょっとは疑ってだろ!」
アホ呼ばわりされて、あたしもブチっ。
包丁を握ったまま戒の顎先に突きつけると、包丁の切っ先を突きつけられた戒が目を開いて両手を挙げる。
「お…俺が悪かった…落ち着こう。な♪」
すぐ隣で一部始終を見守っていた(?)キョウスケがふっと笑い出し、
「まぁまぁお嬢、落ち着いて」と言ってあたしを戒から引き剥がす。
「僕の彼女は猟奇的な彼女ですぅ」とドキドキ心臓を押さえながら、さっとキョウスケの後ろに隠れる戒。
「ぁ゛あ!?」とまたもあたしが睨むと、
「まぁまぁ……あらゆる可能性を考えても、病院で狙撃されたことが、彼の自作自演だとは思えません」
「何だよ…あらゆる可能性って…あいつが陰険かそうじゃないかって言えば陰険な可能性…って言うかそれは確実だぜ」
「どうしてお前はそこにこだわるんだよ。
ま、分からんではないが。俺もあいつキライ。ってか苦手。
何か~近づきたくないんだよな。でも避けては通れないような…
何か変な感じだけど、とにかく苦手」
戒がキョウスケの後ろで、む゛~~と唸って腕を組む。
「……まぁ、あの人の人格について話し合うのはまた別の機会にして…」
キョウスケが「おいといて」と言った感じで手を移動させると、
「鴇田さんがスネークでないのは、彼が龍崎会長の右腕だからですよ。
彼はその立場だけではなく、会長に絶対的な忠誠を誓う人物。
その鴇田さんが龍崎会長を裏切るようなことをするとは思えません」
キョウスケは淡々と言って、後ろに回った戒をちらりと見る。
「少なくとも俺だったら、
戒さんを裏切るようなことはしない―――」
キョウスケ…かっこいいな!お前っ!!オトコの友情ってヤツか!
あたしはじ~ん…と感動の涙さえ浮かべたってのに、
「……な、筈。…たぶん」と自信なげに言い直すキョウスケ。
おいっ!



