結局そのあと響輔は帰っていった。


「ほな、また何か分かったら教えて」


「誰が教えるもんですか」


んべーと舌を出して、あかんべをすると、響輔は


「元気そうやな。その分じゃ一人でも平気か」


とまたちょっと笑ってあたしの頭をそっと撫でてきた。


ドキリとまたも心臓が鳴ったけれど、それを悟られないようにわざと大げさに嫌がってみせて、


「またね」とそっけなく返す。


「ほな」


パタンと扉が閉められて、それでもあたしはドアの前から一歩も動けずにしばらくその場で佇んでいた。




あたしはどうやっても朔羅には勝てないのだろうか。


“妹”に勝てないのだろうか。


姉妹で三角関係なんて嫌な図。


そう思って落ち込んだときもあったけれど、くよくよしていられない。


後ろ向きなあたしとは、その日でさよなら。


次の日からどうやって響輔を落とすか、考えに考えた。


三日経ったこの日の朝6時前―――


その日は、都内某所の撮影スタジオで冬ドラマの撮影があったけれど、主演女優の都合とかで急に撮影が延びた。


どんなわがまま言ったのか知らないけれど、清純、天然がウリの若い女優の裏の顔は、売れてることをいいことに我侭し放題で、周りのスタッフに迷惑ばかり掛けている。


あたしも我侭な方だけど?でも一方的過ぎて腹が立つ。


と言うわけでこの日はたった2分にも満たないドラマのワンシーン撮影を延期され、あたしのスケジュールが一日空いた。


それを聞いて、すぐに響輔に電話を掛けた。


この間のお礼を言ってさりげなくデートに誘うのよ!そう意気込んで電話を掛けたものの、


『……今度は何や…』


開口一番、僅かに掠れた声の不機嫌声。