。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。




「俺があんたの話に付き合ったら、朔羅は無事返してもらえるんだな」


確認するつもりで聞くと、


「約束は守るわ。


あたしだって今、響輔の恨みを買いたくないもの」


イチは軽く肩を竦めた。


俺は吐息を付くと、


「あと一時間であがれる。それまで待っててくれ」


と諦めたように肩の力を抜いた。


「ええ、いつまでも待ってるわ。その前にこれは預からせてもらうわね」


イチは握ったままのケータイを俺の手から抜き取り、電源を切るとバッグの中に仕舞いいれた。


ひたすらに焦っていたのもある。あっさりとケータイを奪われて、俺は抵抗する気力もなかった。


と言うかできない。







何て言ったって、今朔羅の命はこの女の手の中だからな―――




下手なことができない。



「あ、アイスティーを一つお願いね♪お仕事がんばって♪」


イチは軽くウィンクすると長い髪を振って、店内の席へと移動していった。


「お、おい!龍崎っ!あの女誰だよ!」


「まさかお前の彼女!?」


「モデル!?すっげぇ美人♪おまけにスタイル抜群」


さっきから背後で煩かった店員が、イチが離れるとわっと近寄ってきた。


「彼女じゃないっス。俺、仕事あるんで」


俺はそっけなく答えて、厨房に戻った。


話って何なんだよ。朔羅は無事なのか。


苛々と皿を洗いながら、ひたすらに時間だけを気にする。






早く…


早く!





早く朔羅の無事を確認したい!!