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そんなくっだらない喧嘩を聞いてるときだった。
「お取り込み中申し訳ございやせん。お嬢…キョウスケから電話です。メガネに」
と襖の向こうでマサの声が聞こえてきた。
普段なら襖の向こうから大声で怒鳴るのに、叔父貴が居る状態ではさすがにそれは控えている。
「キョウスケから?」
あいつ…やっぱ無事だったんだ…そのことにちょっとほっ。
ってかあたしが心配し過ぎ??
「おい、戒。キョウスケから電話だってよ」
あたしが戒の腕をちょっとつつくと、戒は立ち上がった。
「おい、あんた。俺が席外すからっていい気になんなよ!」
と捨て台詞(?)を吐いて叔父貴をビシっと指差すと戒はしぶしぶと言った感じで部屋を出て行こうとする。
『いい気になるな!』とか…ガキかよ。
叔父貴はここではじめてキョウスケが居ないことに気付いたのか、
「何だあいつ。朝帰りか?」
「あんたが来るって気付いて、逃げてったよ。あいつ琢磨センサーがあんの」
と、戒はまたでたらめなことを言ってるし。
まぁあながち外れてはなさそうだけど。
キョウスケ、叔父貴のこと苦手とか言ってたしな。
案外ここに居るより、出先の方でのんびりしてたりして。
「悪いな、朔羅。もっとゆっくりしていきたかったんだが、この後人と会う約束をしててな」
「あ、うん!こっちこそあんまりお構いできなくてごめん」
慌てて手を振ると、
「早く帰れっ」
戒は思い切り敵意むき出しで、叔父貴を威嚇しながらも出て行った。



