「戒に用がある。こいつの部屋に行くから俺のことは気にするな。朔羅、お前も来い」
有無を言わさない気迫に、あたしは疑問を口に出す暇もなく戒の部屋に連れて行かれた。
な、何を言われるんだろ……
と緊張していたが、
「昨日は悪かったな。これで機嫌直してくれないか?」
トン
と置かれたのはケーキが入ってるっぽい箱だった。
「え…え??」
訳も分からずとりあえず勧められるままケーキの箱を恐る恐る開ける。
中には色とりどりのケーキたちが入っている。
大好きなイチゴのショートケーキ、ガトーショコラ、チーズケーキやフルーツタルト。
いかにも高級そうなプリンのカップも入っている。
「お前たちに、だ。あとキョウスケの分も。あいつには迷惑をかけたからな」
叔父貴の言葉にあたしたちは顔を合わせて目をぱちぱち。
「……いや、別に怒ってないけど…」
元々原因あたしだし。
「なるほど。食いもんを出してさりげに謝るって寸法か…」
戒がケーキの箱を眺めて目を細めた。
『朔羅がケーキごときに吊られると思ってんのか!』
と怒鳴りそうな雰囲気だ。
だけど
「その手があったか…。やるな…」
くっと唇を噛んでる。
あたしゃ単細胞か!
ってかこれが戒の言う『スマートな謝り方』かよ!!



