。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。








叔父貴―――……


もしかしてまだあたしがかんざしを向けたこと、根に持ってるのかな…


ドキンドキンと胸を鳴らしていると、


「僕ならここに居るよ?」


すぐ近くで声が聞こえて、あたしの手の上に戒の手がさらに重なった。


戒は風呂をあがったばかりと言う感じで、まだ髪も濡れいてたし、首にタオルをぶら下げている。


戒の声はいつものメガネの声だったのに、睨み上げる視線は険悪で冷たいものだった。


叔父貴は切れ長の瞳を細めて無言で戒を見下ろす。


凶悪で凶暴な肉食獣たちの視線が空中で絡まりあい、


『朔羅からその手を離せ』


『お前こそ離せ』


無言の視線がそう語っているようだった。


あたしは慌てて二人の仲裁に入るよう二人の間に割って入り、


「お、叔父貴どうしたの?戒に用事?」


と恐る恐る聞いた。


「ああ、少しな」と安心させるようにあたしに笑いかけ、叔父貴は顔をしかめると痛そうに口の端を歪めた。


よく見たら、叔父貴は口の端に小さな絆創膏を貼ってあって、額にも昨日戒にやられた傷跡が生々しく残っている。


「会長!そのお顔どうされたんですかい!」


マサがびっくりしたように目を開き、


「会長の美しいお顔に傷が!?誰にやられたんですかい!!」


と、組員の誰かが叫び声を上げた。


「ああ、これは……」叔父貴は口元を押さえながら、ちょっと考えるように首を捻り、


「階段から派手に落ちたんだ。


それは“階段落ち”のように」


といい訳してる。


てか、いい訳も戒と同じ!?


さすが(血が繋がってないけど)親子!!




組員は戒と叔父貴…二人を怪訝そうに見上げていたが、


「何だ、何か文句あっか!」


と叔父貴の一喝に組員たちは慌てて顔を逸らした。