「会長!お越しくださるならお出迎えいたしましたものを」
マサが額に汗を浮かべて慌てて頭を下げる。
「いや、急に思い立ったんだ。それに寄るところがあるから、そのついでだ」
と言って茶の間に並ぶ面々を見て、眉をひそめた。
怪我してるからか?いつもにも増して迫力が…ヤバい。
「戒は?」
「メガネの野郎は風呂です。あいつに用ですかい。おい、メガネの野郎を呼んできな」
マサが答えて、最後の方は声を潜めてタクに命令している。
あたしはごくりと喉を鳴らした。
叔父貴―――……戒に何の用なんだよ。
やっぱり昨日のこと、まだ怒ってるんだろうか……
「タク、いいよ。あたしが呼んでくる」
あたしはタクを止めて、茶碗を置いた。
「え……でも…」と困惑したようにタクが眉を寄せる。
「いいって。おめぇは叔父貴を労ってな。あたしが行く」
立ったままの叔父貴の横を通り抜けようとすると、
パシッ
叔父貴の手があたしの手を掴んだ。
叔父貴の少し低い体温の大きな骨ばった手があたしの指をそっとなぞる。
ドキリとして顔を上げると、
「箸は置いていけ?」
といつもと変らない様子で微笑みを浮かべた。



