響輔がバスルームに向かっていって五分。


ザー…


と湯の音が聞こえてきた。


はぁ


ため息を吐いてローブを羽織ると、あたしは冷蔵庫からオレンジジュースを取り出した。


TRRRR


瓶のジュースをグラスに注いでいる間に電話が鳴り、サブディスプレイに玄蛇の“今の名前”が通知されているのを見て、あたしは慌てて通話に出た。


『やぁ、おはよう♪』


朝から無駄にイラっとくる能天気な声を聞いて、あたしは目を細めた。


電話を肩と耳の間に挟んで、ジュースを注ぎいれる。


「悪いけど、朔羅を呼び出すのは失敗したわ」


『いいよ。正直そんなに期待してなかったし。そもそも黄龍は簡単に姿を現すわけがない』


あっそ。


「じゃぁ何で拳銃をあたしに渡してきたのよ。あんたに借りた拳銃、響輔が解体しちゃったわよ。内部構造まで詳しく知らないから、部品の一部あいつが持ち帰るかも」


『それも計算済みさ。あの拳銃からは何も出てこない。そもそも私がシッポをつかまれるようなヘマをすると思うかい?』


「それもそうね……って言うかタイミング良いわね。あいつがシャワー浴びてる間に掛けてくるなんて」


『シャワー??随分艶かしい響きだね♪ナニかあった??』


玄蛇は楽しそうに聞いてくる。


「何もないわよ!(怒)」


あって欲しかったけど、拒まれたわよ!


―――…発信機のことを聞きたかったけれど、やめた。


響輔は玄蛇を警戒してるみたいだった。


あたしは湯が流れる音に耳を傾けながら、


「用件は何?」と短く聞いた。