ってか敵陣で呑気にシャワーとか……ホントにこいつ危機感あるのかしら。
「戻って龍崎家で朝風呂に入ると、変な風に勘ぐられるんや。“意味深な朝帰りだ”って」
「あっそ。ごゆっくりどーぞ」
そう言ってやると、
「ほんま?なぁ風呂溜めてええ?」
と、またも聞いてくる。ちゃっかりしてるし。
「いいわよ!勝手にしてよ!」
あたしが喚くと、響輔はあたしの腕を握ったまま腹筋だけで軽々起き上がった。
あたしの重みだってあるのに、やっぱこいつ力、強い。
びっくりしたように目をまばたいていると、響輔はあたしを真正面から覗き込み、うっすらと笑った。
「一結、一緒に入る?」
は……
まさかの発言に、あたしが目を開いて口をぱくぱくさせてると、
「冗談や」
響輔はちょっと笑ってあたしに軽くデコピンすると、さっと立ち上がった。
じょ…冗談!?
ってかその顔で冗談とか!!
「お風呂で溺れちゃえ!」
あたしは響輔の冗談を一瞬でも間に受けたのが恥ずかしくて、思い切り響輔の後ろ姿に向かって枕を投げつけてやった。
響輔は後ろを振り向かずさっと避けると、枕をうまくキャッチした。
「こっわい女やな。さすが鴇田さんのDNAを受け継いでるだけあるわ」
と冷めた目であたしを見下ろしてくる。
「あの男とは…鴇田とは何にも関係ないわ」
つんと顔を逸らすも、響輔はあたしの発言を本気にしてないように枕を放って寄越すと、
今度は何も言わず大人しくバスルームに入っていった。



