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戒の手当てをしようと台所に向かった。
確か救急箱が戸棚にあったはず。
戒は「手当てなんていいって。これぐらい全然平気」とか言ってたけど、
バイ菌とか入ったら治りも遅くなるだろうし。
って言うか単にあたしが心配だったわけで。
台所の前まで来ると中からヒソヒソ話し声が。
マサ、タクコンビの声だった。思わず身を潜めるように壁に寄り添った。
っても二人とも地声がでかいから、内緒話でも内容丸聞こえ。
「何ぃ!お嬢がメガネの野郎を土下座させてた!?」
マサが驚いたように声をあげ、
「マサさん二人の仲疑ってたみたいだけど、ありゃ大丈夫ですぜ?大体お嬢があのひ弱なメガネを好きって言う発想がおかしいですぜ」
とタクは苦笑。
あたしが土下座させてたわけじゃねぇっつの!
ってか何でそのことを知ってる!?
と否定したいけどここで出て行ったら、そのわけをあれこれ聞かれるしそれはマズい。
「ま、まぁそうだな。お嬢の好きなタイプは年上の大人タイプで、ワルっぽいのがお好きみたいだからな」
それって……まんま叔父貴じゃん…
ってかマサはあたしが叔父貴を好きだったことに気付いてたの!?
「会長に熱烈片思いしてたのに、何であのメガネに転ぶ??って感じっすよ。だからマサさんの勘違いですって」
タクはガハハと笑い、
ってかタクまであたしの気持ちに気付いてたとは!
戒は早々に気付いたけど、あいつは頭と勘がいいし。でもこいつらまで知ってたとは!
あたしって分かりやすいのかな……急に恥ずかしくなった。



