。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。




短い口付けを交わして唇を離すとき、


「…てー」


戒は口の端を押さえて顔をしかめた。


叔父貴に殴られたときに切ったんだろう。


今は血こそ出ていないが、切れた場所が赤くなっていてほんのわずか内出血を起こしている。


「痛そう……大丈夫か?」


あたしがそっと戒の唇に手を伸ばすと、戒はぎゅっとあたしの手を握り返してくる。


「大丈夫。男の勲章ってヤツだ」


あたしの手のひらにちゅっとキスをすると色っぽく見上げてきた。


『男同士が闘うのは、好きな女のため』


キリさんの言葉を思い出して、急にかっと顔が熱くなった。


「そだ。救急箱とってくる」


あたしが慌てて立ち上がろうとすると、


「これぐらい大丈夫だって」


と言ってまたも腕を引かれて、あたしは戒の腕の中にすっぽり納まる。


戒はあたしの頭に顎の先を乗せて、


「喧嘩してごめんなさい」


と関西弁のイントネーションでもう一度小さく謝ってきた。


まるで小さな子供が母親に謝るような可愛い口調に、あたしは思わず頬を緩めた。