短い口付けを交わして唇を離すとき、
「…てー」
戒は口の端を押さえて顔をしかめた。
叔父貴に殴られたときに切ったんだろう。
今は血こそ出ていないが、切れた場所が赤くなっていてほんのわずか内出血を起こしている。
「痛そう……大丈夫か?」
あたしがそっと戒の唇に手を伸ばすと、戒はぎゅっとあたしの手を握り返してくる。
「大丈夫。男の勲章ってヤツだ」
あたしの手のひらにちゅっとキスをすると色っぽく見上げてきた。
『男同士が闘うのは、好きな女のため』
キリさんの言葉を思い出して、急にかっと顔が熱くなった。
「そだ。救急箱とってくる」
あたしが慌てて立ち上がろうとすると、
「これぐらい大丈夫だって」
と言ってまたも腕を引かれて、あたしは戒の腕の中にすっぽり納まる。
戒はあたしの頭に顎の先を乗せて、
「喧嘩してごめんなさい」
と関西弁のイントネーションでもう一度小さく謝ってきた。
まるで小さな子供が母親に謝るような可愛い口調に、あたしは思わず頬を緩めた。



