「だけど、どんだけ考えてもスマートな謝り方ってのが思い浮かばなくて、かっこわるいけどちゃんと謝るしかねぇな、って思って…」
戒は恥ずかしそうにそっぽを向き、鼻の頭を掻く。
「お前の謝り方だって男らしくてかっこよかったぞ?土下座なんてしてさ。
プライドだってあるだろうに」
あたしは戒に笑いかけると、戒の肩に頭を乗せた。
戒があたしを見下ろして、安心したようにもたれ掛かってくる。
「かっこ悪。俺、どうやって謝ろうかって考えると、胃がキリキリしてきてさ」
「お前の胃は変なところでデリケートだな。多少賞味期限が過ぎたもん食っても全然大丈夫なのに」
そういや前にも一回、ストレス抱えて急性胃炎で入院したっけね。
「俺だって悩むことぐらいあるのよ~」
戒は冗談ぽく笑ってあたしの頬に頭をすりすり。
戒の柔らかい髪がくすぐったい。
ちょっと笑い声を上げて身をよじらせると、逃げないように戒の腕があたしの肩を引き寄せた。
大きなあったかい手のひらがあたしの肩を包み込み、より一層戒の近くに引き寄せられる。
間近に迫った戒が、
「とりあえず、チューでもしとくか」
そう言い出してあたしを真正面から覗き込む。
何だよ『とりあえず』って。
でも戒の頬がほんのり赤くなってるのに気付いて、あたしはそれ以上に頬が熱くなるのを感じた。
「……う」“ん”と最後まで言い切らないうちに
戒の唇であたしの唇がキスで塞がれた。



