龍崎 琢磨はそれだけ言うと、俺が頷くのを待つように真正面からじっと俺の目を見据えてきた。
俺は口を塞がれたまま、何とか頭を上下に動かした。
琢磨さんは満足したようにちょっと口の端で笑うと、手を緩めるかと思いきや、
俺の顎の骨を砕くぐらいの勢いで力を込めて、眉間により一層深い皺を刻み
眉を吊り上げると口の端を妙に吊り上げた。
「それと、盃の話しがまとまるまで、朔羅に手を出すなよ。
クソガキ」
それだけ言うと、龍崎 琢磨は手を離した。
「ぷはっ!」
窒息するっての!俺を殺す気か!!
酸素を求めるように口を開いて息をしていると、
「話しはそれだけだ。邪魔したな」
と、龍崎 琢磨は出て行こうとする。
「待てや」
俺は龍崎 琢磨の肩を掴み、振り向かせた。
「何だ?」
「朔羅に手ぇ出すな、やと?それはこっちの台詞や」
龍崎 琢磨が俺を見下ろし、その黒い瞳の中に険悪に何かが光った。
「お前こそ、朔羅にキスしたみたいやないか」
龍崎 琢磨が目を開いて俺を見据える。
俺は拳を振り上げると、
「朔羅に手ぇ出すなやと!!
どの口が言う!
お前のせいで朔羅がどないな想いしとるか分かったとるんか!!」
バキィッ!!
一度やってみたかった。
龍崎 琢磨の、いつも涼しい表情を浮かべたその整った横っ面を
思い切り殴ってやるってことをな!



