「肉食獣?あんた取って食われたクチかよ」
俺が腕を組んだまま鴇田を見ると、
「………」
鴇田は黙り込んだ。この様子からすると間違いないな。
「聞いたぜ?あんた結婚するんだってな」
「耳が早いな。どこでその話を?」
「朔羅が言ってた。あいつがどこで聞いたのか知らねぇけど」
「お嬢が……?」
鴇田は目をまばたきフィッティングルームの扉をちらりと見た。
「何だよ、あんたが結婚する話俺が知ってるのは良くて、朔羅はいけないのか?」
訝しげに眉を吊り上げると、
「いや……お嬢は何て?」
と聞いてきた。
何でこんなこと聞くんだ?
「なんてって……」そう言い掛けたときだった。
カチャッ
白い個室のフィッティングルームの扉が開いて、ドアの隙間から朔羅が顔だけおずおずと覗かせた。
「か、戒……」
恥ずかしそうにちょっと俯いて、
「何だ、着たの?見せて♪」
と覗き込もうとすると、
「いや…着たには着たんだけど、ちょっと胸元が開き過ぎてるって言うか……」
胸元が……?
見たい!
俺はいそいそと扉を開けた。



