「あいつと何があったとしても、こうやって戻ってきてくれたし、お前からこうやって抱きついてきてくれた。
俺はそれだけで充分」
戒はあたしの額にちゅっとキスを落として、恥ずかしそうにちょっと笑った。
そのまま睫を伏せてあたしの額にこつんと自分の額を合わせる。
「幻滅した?かっこ悪い俺を見て」
ううん!
あたしはそう言う意味でぶんぶん首を横に振った。
そして戒の首に腕を回すと、戒と同じだけ力強いものを込めてぎゅっと抱きしめた。
戒の襟元から爽やかな柔軟剤の香りが香ってくる。
戒の吐息は爽やかなミントの香りで、それに混じってほんのわずか……叔父貴より軽いタバコの匂い。
戒のこの香りが好き―――
「あたしは戒が好き。
お前じゃなきゃダメ」
戒が僅かに目を開く気配があった。
そしてすぐに表情を緩めて、
「俺もお前じゃなきゃダメだ」
そっと囁いた。



