逃げ出すことも可能だったけど、この二人を目の前にして何かその気力が低下した。
って言うか吸い取られた。
まぁいっか。普段なら(て言うかこれから一生お目に掛からないかも)絶対食べられないもの食べられるわけだし。
こうなったら、しっかりと味わってやる。
そしてその間にあたしはディテクティブごっこを再開だ!
「なぁ彩芽さんは元気……?」
あたしの前の席でのんびりと茶を啜っていたドクターに、さりげなく問いかけ(または探りを入れると言う)てみた。
「元気ですよ。今日は仕事が入っていてクラブに行っています」
「アヤメさん??」
タイガが不思議そうに首をかしげ、
ってかタイガも知らなかったんだな、こいつに女が居ること。
「びっくりするなよ?こいつのさ~…」
“恋人だぜ?”と言い終わらないうちに、ドクターがあたしの言葉を遮るように、
トン
ちょっと大きな音を立てて湯飲みをテーブルに置いた。
「お嬢さん、そんなことよりもっと衝撃的なニュースがありますよ」
衝撃的なニュース??
あんたに恋人が居たって言うニュース以上に衝撃なもんがあるのかよ。
と、疑わしそうな目つきでドクターを睨むと、
「弟が結婚するみたいです」
ドクターはにこりと似非くさい笑顔を浮かべた。



