俺は龍崎グループの本社に向う前に、自分の組の事務所に立ち寄った。
「「お、おはようございます!オヤジ!!」」
俺の登場に組員たちが驚いたように目を丸めて、慌てて立ち上がる。
「今日は本社では?」
「ああ、その前にちょっと用事があってな。大狼は?」
「タイガの兄貴??居ますけど、またご自分の世界に入り込んでる最中なので、今は話しかけない方がいいと思いますけど?苛々するだけですよ」
うんざりした様子で、しかもありがたい忠告をしながら組員がデスクの一角を目で指し示すと、
「ヒヨコちゃん♪」
といつもの調子でうっとりとデスクトップを眺めている大狼の姿が目に入った。
相変わらずだな。
トン
俺がヤツのデスクに手を突いて、
「おはよう」
声を掛けると、大狼がのろのろと顔を上げる。
「あ、おはよ~ございます、組長♪今日来る予定でしたっけ?」
といつもの調子でへらへら笑っている。
むぅ。しまりのないだらしない笑顔だな。仕事しろ!
「俺が来たら迷惑か?」
「迷惑だなんてとんでもない!コーヒー淹れましょうか??」
「スペシャルドリンクか?それなら要らない」
「やだな~★あれは、と・く・べ・つ♪ですよ~。ひよこちゃん専用なんで」
………
いつもなら「気色悪いこと言うな!キョウスケをどうするつもりだ!!」と言って手近にあるファイルを投げつけていたが、今日は違う。
様子を窺うつもりで俺は、ヤツのデスクの端に腰掛けた。
「どうしたんですかぁ?」
俺の態度に大狼が気色悪そうに顔を歪ませる。



