「身体的な特徴を示すなら、もっと重要視するべき事実があるわよ?」
キリは口元に淡い笑みを浮かべて俺を覗き込んできた。
「その彫り師の弟子…?の一人が兄のこと覚えていたのはね、彼が稀に見る身体的特徴をしていたから―――印象深かったんですって」
「稀に見る身体的特徴?腕が三本あるとかか?それなら探しやすいな」
冗談めかして肩をすくめて見せると、
「それは素敵ね。惚れそうになるわ。でも残念ながらそうじゃない。
彼は
アルビノらしいわ―――」
アルビノ……
俺は目を開いた。
「…確かに稀だな。だがそれならお前の記憶に残っててもおかしくないんじゃないか?」
「確かに特徴あるけれど、三十年前の記憶よ?その後色々あったし私も必死だったから忘れたってしょうがないじゃない」
キリが面白くなさそうに唇を尖らせて、体を起こす。
「ああ…まぁな」
「コーヒーできたわ」
キリはそっけなく言って俺から離れると、再びキッチンに向ってコーヒーメーカーからカップにコーヒーを注ぎいれる。
その横顔を見つめて、何を考えているのか読み取ろうとしたが、その顔から何の感情も読み取れなかった。
ただ無表情の白い顔に向って、
「お前は―――俺を恨む?」
結婚を承諾した女に向って問いかけるべき質問ではなかったが、聞かずにはいられなかった。



