彩芽さんのお話は面白かった。


元はクラブのホステスって言ってたから、話が上手なんだろう。


彩芽さんの話で、あたしはいっとき色んなことを忘れられた。


「付き合って長いんですか?」


「一年ぐらいかしらね。一緒に住みだしてからは半年程。衛さんも私も生活が不規則ですれ違いが多いから、それなら一緒に住もうって。


約束してたのに会えないなんて!って喧嘩にならないから穏やかなものよ」


「喧嘩…するんですか?」


「すると言っても一方的に私が怒ってるだけね。衛さんにはいつも宥められるわ。だけどそれも数分で終了。


衛さん相手に怒っても、すぐに怒りがおさまるの」


「分かる!あいつって何か生気吸い取られるんだよな~」


しかも戒なんて「変なオーラ出してる」って言ってたしな(笑)


あたしが妙に納得顔で頷くと、彩芽さんは可愛らしい声をあげて笑った。


想い合ってる気がした。


いつか見た―――…そう、あれはリコのお姉さんカップルだ。


あんな二人の空気が、彩芽さんを取り巻いている。


それは穏やかで、心地良くて―――


「結婚……しないんですか?」


あたしは気になったことをおずおずと聞いてみた。


もしかしたら聞いちゃいけないことかもしれなかったけど。


気になっちゃったから。


「いずれするつもりよ。青龍と白虎の盃の話がまとまったら、落ち着いたら籍を入れようと話している最中」


青龍と白虎の盃―――


それは戒が黄龍を襲名したあとってこと。