俺は正直あいつら二人の関係が―――少し羨ましいのだよ。


何でも素直に打ち明けられる。


どんな感情も共有し合える。


―――そんな関係が―――……


トントン


ドアをノックする音がして、


「お話しは終わりました?」


キリがもう一つのコーヒーカップをトレイに乗せて、にこにこ入ってきた。


相変わらず―――タイミングがばっちりだな。


「鴇田部長のコーヒーを新しく淹れていたので、時間差になってしまい申し訳ございません」


会長と同じウェッジウッドのカップを応接セットのテーブルに置いて、キリが腰を屈める。


スーツの上着の裾が上がり、カットソーの合間から白い肌がちらりと見えた。


蛇のタトゥーがちらりと目に入り、


キリがコーヒーを置きながら、俺に目配せしてくる。


「毒入りコーヒー・召し上がれ♪」


口がそう動いたように見えて、俺は思わず額を覆った。


くくっと会長が声を押し殺して笑っている。




「女は怖いな。イチと言いキリといい―――彩芽と言い、お前は大変だな」





若干同情するような視線を向けられて、俺は何だかもう色々諦めた。





「彩芽さんは衛が担当です。私じゃありません」


厄介な女ども三人の面倒なんて、いくらこの俺でも無理だ。





「会長、今日は少し早めに失礼しても宜しいでしょうか。体調がまだ万全でないので」


完全なる嘘だった。会長もそのことに気付いているだろうに、ちょっと楽しそうに笑ってコーヒーを飲むと、




「ああ、そうしろ。明日からまた働いてもらう。




キリには二三日出張に行ってもらう。場所は―――鴇田の部屋だ。構わんだろう?」






会長の言葉に俺たちは顔を合わせた。