「結婚と言えば、お前もそろそろ身を固めたらどうだ?
キリなんてどうだ?
美人で頭が良くて、いい感じに小ズるくて色っぽくて、おまけにいいカラダで、策略家で―――行動力があって。
美人で、おまけにいいカラダだ♪」
…………
会長、『美人でイイカラダ』を何気に二回も言いましたね。
「まさかと思いますが、会長…」
「寝てない。お前とだけはきょーだいになりたくない」
そのことにちょっとほっとする俺…
「今日あたり電子レンジに入ってみたらどうだ?キリはあったかそうだぞ?♪自然解凍は時間が掛かる♪」
………
こんな冗談を言えるまで浮上したことが―――…良かった…と言うか、俺をネタに浮上しないで欲しい。
「会長は北極の氷の下で永遠の眠りについたほうがいいと思います」
俺が無表情にジョークを飛ばすと、会長は豪快に笑った。
「お前のお陰で元気になった。お前の言うとおり、冷却期間をおくとしよう。
さすが年の功だな。だてに長く生きてるわけじゃないな。お前の言葉は説得力あるぜ」
「それは良かった。私からしたらあなたはまだまだほんの小僧ですからね。容易いものですよ」
あはは、と笑い飛ばしながらも俺たちは睨みあった。
思えば―――
こんな冗談交じりの小さな喧嘩でさえも、最近していなかった気がする。
それは病室で交わしていた虎間とキョウスケのそれと似ているようで―――
ほんの少し心があったまった。



