「そのキリにですが、今スネークの居場所を探させるよう頼んできました」
会長がカップをソーサーに置く。
カッ…
乾いた音が響いて、ゆっくりと顔を上げた。
キリが玄蛇の生き残りだと言うことは会長も、もちろん知っている。
最初は“見張り”と言った意味であいつを傍に置いているのは分かっていた。
だが意外にもキリは良く働き、実際にデキる女だ。そんなキリを会長が頼っている部分もある。
こんな土壇場での利用価値を見出せたのは本当にラッキー…付加価値だ。
「今は青龍と白虎の盃の件がある。厄介な人間が出てきたものだ」
「だけど理由が分かりませんね。何故私たちが狙われるのか。ヤツにとってもはや極道の統治なんて関係ないはず」
「さあな。ヤツ自身じゃなく誰かに雇われたのだろう。雇い主を探すほうが手っ取り早い」
「鴇田、この縄張りで不穏な動きのある組を探し出せ。どんな手を使っても構わん。
それに“スネーク”が現れたとなると、
もう一人―――“厄介なヤツ”が嗅ぎつけてくる」
「あなたの“宿敵”ですね」
俺が肩を竦めると、
「ああ。切っても切れない腐れ縁てヤツだな。しばらく大人しいと思ってたら…」
と言って会長は言葉を飲み込んだ。
「大人しいと思ってたら?」俺はその先を促した。
「どうやら結婚したらしい」
「…はぁ?」
結婚…?“あいつ”が??ちなみに俺は会長の“宿敵”をよぉく知っている。
「新婚でラブラブ。美しい伴侶にメロメロ。あいつの溺愛っぷりがキモい!!」
ラブラブにメロメロ…それから、キモい…
俺はその言葉を会長の口から聞くのがキモいですが…
俺はその“宿敵”の姿を思い出し、
確かに気持ち悪いな、とちょっと思った。



