その空薬きょうの大きさは単三電池より少し長くて、だけど電池よりも細い先の尖った形をしていて、鈍い金色をしていた。


「M240?」


あたしが聞くと、


「アメリカの海兵隊が使用するFN社のマシンガンだ。口径は7.6mm。最大射程は3700m。


約二分間の連続射撃が可能だ」


なるほど!だから戒はあのとき時間を計ってたってわけか!!


弾を装填する合間を狙ってたわけだ。


響輔も、あたしの鏡でその隙を狙ってたんだな。


「あのタイプのマシンガンは全長が1m以上、重量は約11Kg。


二脚(地面に置いて銃本体を固定するもの)を使っても、あの速さで打ち込んできたからな。
ある程度の反動があるにも関わらず敵は的確に狙ってきた。


さらに一発目で防弾硝子に傷を入れて、すぐに同じ場所に打ち込んで防弾硝子を破壊できる程高度な技術を持ってる。



間違いない、プロの仕業だ」



プロ―――……殺し屋が居るってことか。


「ってか、おめぇ詳しいな!詳しすぎるぐらいだよ!普通の男子高生が知ってる知識じゃねぇよ!!


は!おめぇまさか銃ヲタク!?」


思わず突っ込むと、


「ガンマニアと言ってくれ。っつても俺はマニアじゃねぇよ。


ミリタリースクールで嫌ってほど見てきたんだ。あれぐらい見分けがつくって」と戒はうんざりしたように両腕を投げ出した。


「練習でぶっ放したこともあるけど、結構扱い辛い。海兵隊が使用してるもんだぜ?あれはよっぽど訓練されてなきゃ女は無理」


「戒さんの要らない経験もこんなところで役に立つとは」


とキョウスケがしみじみ。


「要らない経験って何だよ!俺ぁハジキより薙刀派だ!」


何だよ、その派は。と突っ込みたかったけど、この際いいや。


キョウスケじゃないけど、こんなところで戒の知識が役立つとは。


「どう考えたって、イチのあのほっそい腕じゃ無理だぜ?俺だってあそこまで撃ち込むのは無理」


早々に結論を出して、そして戒はあたしの肩に腕を回してきた。


「でも今回は朔羅のファインプレーだな。


お前の動体視力の良さに感謝♪


お前があの銃口の光に気付いてなかったら今頃俺たちは仲良く天国だ♪」


仲良く天国……


ぃやぁあああ!まだ十六歳だってのに、まだ戒と結ばれてないってのに!!


「俺だってお前と清い関係のまま天国行くのはイヤだぜ」


戒が妙に感慨深げに頷いて、腕を組み、


「Go to hell(地獄に堕ちろ)」


とキョウスケが脚蹴りを戒にかました。