あれこれ考えている暇はなかった。
あたしは楯になる何かを探して近くに視線を這わすと、すぐ近くで戒が座っていた折りたたみ式のパイプ椅子が目に入った。
半分が銃撃によって粉砕されてるけど使えそうだ。
その脚のパイプ部分を足で蹴り上げると、反動でパイプ椅子が上部へ跳ね上がる。
それを手にキャッチして、そのまま振り上げると、
「鴇田!伏せろっっ!!」
窓際に向かってパイプ椅子を力いっぱい投げつけた。
それと同時だった。
鴇田があたしの声に反応して飛び込むように身を翻らせる。
殆ど僅差で、宙に投げられたパイプ椅子が―――
ドン!
ガシャン、ガシャン!!
派手な銃声と共に破壊された。
床に伏せた鴇田が唖然として目を開き、本来なら鴇田がそこに居た場所で椅子はあっけなく粉砕された。
「お嬢、今です!」
「今や!!」
鏡を覗き込んでいたキョウスケと、何かの時間を計っていた戒の声が重なり、
それが合図となったのか
四人同時に腰を上げて、飛び出すように部屋の外へ走り抜けた。
銃声が止んだのはたったの数十秒だったが、
部屋の一番奥に居た戒が廊下に飛び出すように逃げ出てきて、
あたしたちはドクターも含める四人で戒を引っ張り、四人が同時に床に転がった。
最後に戒が扉を脚で蹴りあげ、乱暴に閉めたあとも容赦なく弾が打ち込まれ穴が開いて行く。
「朔羅!」
それでも体勢を立て直した戒に腕を引かれて廊下の壁に身を寄せた。
さすがに壁までも貫通することができなかったのか、銃弾の音は少しの間部屋の内部で響いていたが、やがて止んだ。
扉の反対側でキョウスケも鴇田、ドクターも肩で息をしながらも、力なく床に座り込んだ。