「何事ですか!?」
病室の扉が勢い良く開き、ドクターの大きな声を聞いた。
「衛!顔を出すな」
鴇田の怒鳴り声を聞き、銃声が轟く。
飛んでくる銃弾を避けるように扉に身を隠し、時折ドクターが必死な形相で手を差し伸べてくる。
「外へ!ここまで銃弾は届かない!」
「お嬢、行きましょう」
あたしはキョウスケに抱えられるようにして、部屋の外を目指したがその行く手を銃撃が阻む。
目の前で物入れのチェストが破壊され、慌てて身を引いてベッドの脇に腰を落とす。
何度も身を屈めて避けるがこれじゃ埒が明かない。
大体にしてこの病院はほとんどと言って良い程、防弾硝子になっている。
その特殊な硝子を打ち破ったのは相当な破壊力を持った銃であることが確実だ。
流れ弾に当たっただけでも無事ではいられない。
あたしたちを狙っているスナイパーはあたしたちが死ぬまで銃撃を止めないつもりだ。
窓際では鴇田が銃を構えて、様子を窺っているが散弾銃での攻撃で窓から顔も出せない。
ベッドの脇でキョウスケはあたしを庇いながらも退路を見つけようと素早く視線を這わせている。
戒は―――
一番離れた場所、壁際のテレビ台の下からこちらの様子を気にしていて、
「響輔っ!」と怒鳴り声を上げた。
キョウスケが反応し、それを認めた戒が僅かに手を出して、手と指で細かく合図をした。
それは軍人が見せる実戦における指示で、手の合図を理解したのかキョウスケは大きく頷いた。
「お嬢、鏡持ってますか?」
そう聞かれて、あたしは近くに転がっていたバッグを慌てて手探りで手繰り寄せた。
鏡を何に使うのかは分からなかったけれど、あれこれ考えてる暇なんてねぇ。
慌てて中から小さな折りたたみの手鏡を取り出しキョウスケに手渡すと、キョウスケは鏡を開いて、背後を確認した。
戒が真剣な表情で腕時計の時間を確認している。
キョウスケがあたしを庇うようにベッドの影で身を屈め、鏡の中に映った背後の景色に集中しているさなか、
バンッ!!
またも音がして
パリンッ!
響輔の持っていた鏡の端が破壊された。響輔が攻撃を避けるように、鏡から顔を背けて、あたしはびっくりして声も出ない状態。
亀裂の入った鏡の、歪んだ側面にまたも視界の端に光を強く捉えた。
スナイパーが銃口の角度を変えやがったんだ。
狙いは―――……!



