「お嬢はものじゃありません」


「だけど俺の彼女だ。朔羅が好きなのは俺だ」


「気が変わることだってありますよ」


「じゃぁ気を変えてみろってんだ」


な、何だか話しが変な方向に……


鴇田だけは大人の余裕なのだろうか、それとも無関係だからだろうか、「やれやれ」てな具合で肩を竦めている。


やがて二人の口げんかはヒートアップしていって


「やるってのか!ぁあ?いてまうぞ!!」


「望むところですよ!」


わ!!マズイ!!


「お、おい!鴇田!何とかしろ!」


元々は鴇田が変なこと言い出さなきゃこんなことになんなかったんだよ!


あたしは半ば八つ当たりで鴇田に怒鳴った。


そのときだった。


鴇田の背後―――大きな窓から見えた向かい側のビルの屋上で不自然な光が一瞬だけ目に入った。





…!



「伏せろ!」




ほとんど反射的に―――あたしが怒鳴ると同時だった。


ビシィ!


分厚い窓に何かが打ち込まれ、そこからまるで蜘蛛の巣のような亀裂が入った。


「……え?」


鴇田がゆっくりと振り向く。


またもキラリと光がして、


「危ない!!!」


あたしは鴇田の腕を引っ張って、強引に頭を押さえつけベッドに倒れ込んだ。


それとほぼ同時に、




ガシャ――ン!!!!




硝子窓の割れる派手な音が部屋中に響いた。