鴇田の見舞いと聞いたから、ある程度何か言い合いみたいになるかと想像してたけど、
これは予想外だ。
奇妙過ぎる沈黙が降りてきて白くて広い、いかにも清潔そうな病室を不快に重圧している。
ガタッ
それまでことの成り行きを見守っていたキョウスケがパイプ椅子を鳴らして立ち上がった。
その音がやけに大きく響き、あたしたち二人は同じタイミングではっと顔を上げた。
キョウスケは無表情のままあたしの前まで来ると、
何を言い出すのか変な風にドキドキしていたあたしに、
「お嬢、その服可愛いですね」
と場違いな一言。
何を言い出すかと思ってたけど、何だよ!そんなこと今はどーでもいいっつの!
ってかキョウスケって頭良いくせにたまにKY!!
それでも「可愛い」って言ってくれたことに嫌な気はせず、あたしは素直に
「あ、ありがとよ」と何とか答えた。
「良く似合ってます。しかも…」
そこまで言ってキョウスケは口を噤んだ。
「何だよ、はっきり言いやがれ!」
持ち前の短気を発揮して、あたしがキョウスケの胸ぐらを掴みぐらぐら揺すった。
だけどキョウスケはちっとも堪えてない様子で、
「戒さん好みの服だ」と面白く無さそうに顔を背ける。
「へ!?」
思わずあたしはキョウスケからぱっと手を離した。
ま、まぁこれは戒が選んでくれた服で。戒がプレゼントしてくれたわけだけど。
う゛!キョウスケめ、鋭いな。
「可愛いだろ~♪俺の女だ。やんねぇぞ」
ぎゅぅと戒に引き寄せられ、
ぎゃぁ!戒!!おめぇも挑発するなよ!!
とあたしだけがあたふた。



