蛇田が交通事故―――
それは何だか一番不釣合いな“死”な気がした。
だってあいつは認めるのが癪だけど、運転に関しては慎重派でそれに結構上手だと思う。
無茶はしないだろうし、それでいて慎重すぎるわけでもない。
それは一度あたしを学校に迎えにきたとき、あいつの車の乗って気付いたことだった。
「で、あいつの容態は―――、やっぱあいつ死んじゃったの?」
心配になってドクターを見上げると、
「かなりの衝撃だったんでしょうね。頭と胸を強く打って―――」
「強く打って……?」
その先を聞くのが怖かった。
何を今更あいつの死にビビってんだろう。ってあたし自身驚いた。
だけど、こんなにも間近に“死”は存在し、そしてそれはあっけなく迎えるんだ。
「発見したとき意識はありましたよ。私が止めたのですが、彼は会長と約束があると言って無理をしましてね」
約束―――……
だって叔父貴はそんなこと一言も……
あたしは押し黙ったままの叔父貴を見つめて、ドクターはそんなあたしに説明を添えて「ほら、あそこに彼の血が」と指差し、
確かにその先には赤黒い染みが点々と連なっていた。
その血の痕はまだ乾ききっていなくて、月明かりの元妖しく光っていた。
鴇田―――ここに居たんだ。
それもついさっきまで?
あたしは全然気付かなかった。でも叔父貴は……
「…あいつ、その後どうなったの……」
「失血が酷くて……」
ドクターは言い辛そうに顔を伏せて、神妙な面持ちで俯く。
やっぱり
死―――……!



