。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。




リコと通話を切ったあと、ケータイをバッグに仕舞おうと思って気付いた。


叔父貴からの着信が残っていたことを―――


昨日―――戒と居るときに、思わず着信を切ってしまった。


その後、今リコと電話をするまで電源を切ったままになってたから、叔父貴があの後掛けてきたのかどうか分からない。


でも家の方には掛かってなかったみたいだ。(マサの様子からすると)





叔父貴は―――どう思っただろう。





戒と居るって―――気付いたかな。





叔父貴にも―――――ちゃんと言わなきゃ。




あたしは白いチェストの上に置いてあるチェリーブロッサムのボトルを手に取った。


叔父貴がくれた香水。


戒が好きだと言ってくれた香り―――


『変えんで』



戒の言葉を思い出し、あたしはボトルをぎゅっと握りしめた。


戒が好きだと言ってくれたから、変えないでと言ってくれたから―――





いつものように香水を手首に付けると、付けていない期間は数日だけなのに酷く懐かしい香りに感じた。


いつもと同じ、爽やかだけど甘い桜の香りがふわりと漂ってきた。


桜に香りなんてないけれど―――



「朔羅」



その花と同じ名前を持つあたしを、愛おしそうに呼んでくれる戒の声を思い出して―――


何だか妙に照れくさいのと、嬉しいのと―――どこか高揚した不思議な気持ちになった。





『おかえり』






そう言われてる気がして、





「ただいま」






あたしはそっと体を抱きしめた。