あたしの質問にドクターは目を細めた。
月明かりの下でドクターのメガネのフレームの先がきらりと光った気がした。
「それは
我が弟の血ですよ」
―――……は?
全く予想してなかった返答にあたしは目を開いた。
弟―――って、蛇田―――……?
何で蛇田がこんな場所―――いや、もしかしたら別の場所で、かもしれないけど
兄貴がここにいるってことはあいつも近くに居たに違いない。
「……あいつ…死んだの?」
恐る恐る聞くと、ドクターは無表情に、
「死んだ方が良かったですか?」と聞いてきた。
「……えっと……いや…」
確かにあいつはいけ好かないヤツだったけど、死んで欲しいと願ったことはないし、
それにあまりに急な展開で、何だか現実味がなかった。
叔父貴は知っていたのだろうか―――…
おずおずと叔父貴を見上げると、叔父貴はあたしからも視線を逸らし顔を背けた。
表情が見えなくなってそれがまたあたしの不安を煽った。
さっきの電話―――…叔父貴、様子がおかしかった。
きっと相手はドクターだ。
『鴇田に言われたよ。
このまま黙っていていいのかって―――』
叔父貴はそう言ってた―――
「事故だったんですよ。弟が運転していた前の車が“横着”でね。弟も悪いが、七:三の割合で急に割り込んだ前方の車に否があるということで」
事故―――……
嫌な響きに、あたしはドキンと心臓がなり、強く心臓を抑えた。



