白衣の上半分は白色だったけど、よく見たら下半分は赤黒い染みで染まっていた。


「血―――!?」


慌てて白衣を見渡すと、それが結構な範囲に染み渡っていることに気付いた。


叔父貴は白衣から目を逸らすと、少し険しい表情でドクターを見上げる。


患者の誰かの血だろうか。


この量だったら相当だ。


もしかして致死量かもしれない。


珍しく冴え渡った頭の中で、ふっと嫌な考えが湧き起こった。


何故ドクターは、御園医院から離れたこんな場所に居るのか。


つい一時間ほど前まで、あたしはマサやタクたち組員と祭りの会場で一緒に居た。


もしかしたら、龍崎組の連中に何かあったんじゃないか―――


それにあの場には、


リコとキョウスケも居た―――








それに戒も







あいつらがチンピラごときにやられるヤツじゃないことを知っている。


だけど何らかの―――あいつらでも不測の、抗えない事柄が起こったら―――?




あたしは目を開いて口元を覆い、白衣をぎゅっと握る。


不吉なことを考えただけで、あたしの方が眩暈を起こしそうだ。


だが、今ぶっ倒れるわけにはいかない。


あたしはきゅっと白衣を握りしめ、ドキンドキンと暴れる心臓を宥めるように胸に手を置き、ドクターを見上げた。





「これは誰の血―――」