◆ デート!? ◆


「せっかく話をしようと意を決したって言うのに!」


あたしはケータイを握り締めて喚くと、


『タイミングが悪いね』と電話の向こうでリコも苦笑。


『マサさんの目を盗んで夜こっそり会いにいっちゃったら?』


とリコが大胆な発言をしたが、


「それも考えたけど……またいつマサが乱入してくるか分かんねぇし、そんな中で話せないよ…」


『じゃあさ!バイトとかの帰りとかは?二人でデートして帰ったらどぉ??そのときにさりげなぁく話題に出すの』


バイト帰りかぁ…


デート…う゛~ん…


「さりげなぁくってあたしには無理。第一バイト帰りだと時間があんまりないもん。頭悪いから思ってること何でも口に出ちゃうし、順序立てて説明できない。

……周りに聞かれたら恥ずかしいし…」


「『う゛~~~ん』」


あたしたちは二人で唸った。


結局考えてもどうすればいいか考えは浮かばず、その日はあれこれ悩みながら眠りについた。





―――

――


次の日のバイトは珍しくぴったりと二人ともシフトが被って、出勤する時間も一緒だし、帰る時間も一緒。


一日のバイトを終えて、ロッカールームで帰り支度をしているとき、思い切って声を掛けてみた。


「か、戒!このあと暇!?ひ、久しぶりにどっか行こうよ!」


結局デートと言う考えしか浮かばなかったあたし。


あたしの申し出に、同じように帰り支度をしていた戒は、髪のセットを直しながら驚いたように目をぱちぱち。


中途半端にセットした髪の先がぴょんぴょん跳ねている。


「どっかって?」


「い、いや!目的は決めてないけど。で、デートっての??夏休みに入ってちゃんとできてなかったから!」


早口に言うと、戒は益々目をまばたき、



「デート……」



と口の中で呟いた。