――雅視点



俺がまだ5つだった頃の節分の日の出来事。



「にぃに、まめまきしたい」


園でもらった豆を二人仲良く食べていると、1つ下の可愛い妹・奏に乞われた。



『豆まきなら、ようちえんでしなかったのか?』


「したけど、おうちでもするのっ」



俺の服の袖を引っ張りながらのおねだり。


どうやら奏は豆撒きがいたくお気に召したらしい。


普段それほど我が侭を言う子ではないし、何より可愛い妹の願いなら出来る限り叶えてやりたいと思う。


しかし、豆を撒くということは当然豆がそこら中に散らばるわけであって、それには須く“後片付け”という作業が付いて回る。

さすがにこれは俺の一存では決められない。


両親・祖父母共に仕事で不在の今、何かあれば執事の坂上に聞くように言われているのだが、これが気に入らなかった。


せっかく2人でまったりとした午後を過ごしていたのに、坂上なんかを呼んだら雰囲気がぶち壊しなる。



「うー、やるったらやるの~っ」


どうすべきか考えあぐねていると、みるみるうちに奏のつぶらな瞳に涙が溜まり、溢れ出しそうになる。


『か、奏!?』


俺は大いに慌てた。


奏は泣き顔すら可愛らしいが、悲しそうに泣く姿を見ると胸が痛くなる。



『わっ、わかった!!にぃにと豆まきしよう!!』


あわや決壊寸前。

俺たちは坂上に無断で豆撒きを断行することにした。