「レインガーデンの皆さん、そろそろ出番です!!」


スタッフさんの潜めた呼び声がして、みんなサッと顔が引き締まる。



いい年越しライブになるといいな。



奈落からせり上がっていく足場の上。

急に頼もしくなった遥の背中を見つめる。


大きくうねる波のような会場の歓声にも揺らぐことはない。




ふわっ。


……えっ?


遥の背中に気を取られていると、後ろから誰かに抱き締められた。



「頑張ろう……」


『……っ』


耳元で囁かれて、一瞬だけ頬に柔らかい何かが触れた。

そのまま、背中を包んでいた温もりが消える。



えっ?

えっ?

えぇ~!?


せ、清龍……。

今の何?


顔近いっ!!

顔が近かったっていうことはもしかして今のってキス~~!?


カァッと全身が燃えるように熱くなったのがわかった。


真っ赤になった顔をどうにかしたいけど、時間がないよ!!


や、やっぱり……。


男の子のノリってよくわからない!!


私の心の叫びは、歓声の波の中に溶けて消えていった。



おしまい☆