「僕以外にあげるなんて許さないよ?」


表情とは裏腹に独占欲にまみれた言葉。

紫水くんの言葉にはなぜかそのまま従ってしまいたくなるような不思議な力があった。



「はい、OKです!!

お疲れ様でした!!」


『フーッ……』


撮影の終了とともに息を吐いて、身体の力が抜けた。

緊張感からか、知らず知らずのうちに息を止めてしまっていたらしい。



「志乃さん?」


紫水くんは早々に引き上げようとする私たちの後方から志乃さんを呼び止めた。


志乃さんが振り返り、視線で問う。


「僕の気持ちの分も社長さんのお仕置きに加えておいてくださいね?

それから……すばらしいポスターになることを期待しています」


自業自得とはいえ、高槻社長が気の毒だと罰を与えた志乃さん自身も思ったに違いない。

志乃さんは曖昧に笑ってその場を後にした。


後日出来上がったポスターは、バレンタインに向けていたるところに貼り出され、雑誌などにも掲載されてチョコレートの売り上げに大いに貢献したらしい。




END.