ガッシャンッ。


引き続きメイクを施していると突然、扉の向こうからけたたましい音が聞こえてきた。


何かトラブルでも起きたのだろうか?


光くんと二人して顔を見合わせるも、仕事を放り出してこの場を離れるわけにはいかない。

気にはなるもののグッとこらえて手を動かしていると、急にドアが開いて由依くんが入ってきた。


『……っ!?』


本人には背を向けたまま、鏡に映るその姿を見て絶句する。


お腹のあたりから足元にかけてひどく汚れた衣装。

そしてなにより、表情が暗い。


いったいこの数分間で何があったの?



「……だ☆」


説明を求めるように視線をさまよわせると、由依くんが何事かを呟いた。


うまく聞き取れなかった私が振り返って“何て言ったの?”と告げるよりも早く、由依くんはもう一度同じ言葉を繰り返す。


「僕もうヤダ!!

おうちに帰る!!☆」


……ボクモウヤダ?

オウチニカエル……。


『「ええ~っ!?」』


叫ぶと同時に、手にしていた道具を取り落とした。