はぁ…


オレは
ため息をつきながら
廊下をウロウロしていた。

ウロウロしか出来なかったが正しいが…。


あまりにも長時間
美々は頑張ってくれているのに、
オレというか男ってさ
こういう時には
本当に何も出来ない。



壁を1枚隔てた向こうから、
弱々しい声が聞こえてきた。



えっ!
オレは嬉しさというか不安な気持ちでいたが




「 細谷さん!
早く来てください!
早く!! 」




あまりの慌てように
オレは驚いて
ドアにぶつかりながら中に入った。




「 宏貴…。 」




汗だくな顔と
今まで聞いたことのない消えそうな声


オレの心臓は止まるかと思った。




「 パパ…
男の子ですよ。 」




オレの胸に抱いた息子は
小さくて
本当に小さくて
会えた嬉しさと
美々の長時間の戦いに涙があふれた。




「 オト…
はじめまして…
これからよろしくね。 」




小さな息子に伝えると




「 うぎゃっ! 」




小さく返事してくれて
さらに涙があふれて止まらなくなった。

大切な息子を
すぐに看護師さんに預けた。




「 美々…
ありがとう頑張ったね。
オレ、何もできなくって…。 」




美々は小さく首をふり
オレに左手をのばして
オレは左手を両手で包んで




「 宏貴…
私こそ、ありがとう。 」




やっぱり消えそうな声に
涙が止まることはないようだ。