なぜかいくら待ってもドアは開く気配もない。


不思議に思ったオレはドアノブに手をかけた。


「……開いてんじゃん」


あっぶねぇなぁ……。

一人で留守番してんのに、鍵閉めてなかったのかよ。


オレは玄関の隅にちょこんと並べられている黒いローファーに目をやった。


「ちっせ……」


また口元が緩む。


ローファーのすぐ横にスニーカーを脱ぎながら部屋の奥に声をかける。


「おい。日向……鍵ぐらい閉めとけよ。あぶねぇだろ?」


オレの部屋はワンルーム。

風呂やトイレのある短い廊下の先が部屋になっている。


返事はいっこうに戻ってこない。


靴があるから居るのは間違いないようなんだが。

オレは首を傾げながら廊下を進んだ。



「おい……日向?」


ドアを開けて部屋の奥を見たとたん、


チャリン……って効果音つきでオレの手からバイクの鍵が滑り落ちた。