一度の保証(短編集)

夫妻が来てから、はじめて口を開いたお母さんが言う。


「埜上さん、あんた達の気持ちは分かるよ。分かるけど、あんた達が、えりなちゃんを大切なように、私たちにも、太一は、大切な息子なんです。
気の毒としか言いようがありません…
帰って頂けませんか」


「いえ!帰れません!」


夫妻は、同じ事を言う。


お父さんは、無視し、違う部屋へ行ってしまった。


女性が、頭をあげ俺の方を見、そしてまた頭を畳につけた。


「太一さん…
太一さんは、どう思われましたか?」


「俺は…
俺は、保証を人にあげるなんてできない…」


「そうでしょうね…
答えは予想していました。でも、引きずってでも、私たちは、貴方にえりなを救って頂きたい一心で訪ねました」


俺とお母さんは、二人に時間を取られたまま客間にいた。


夫妻が、度々、お願いします!とゆう声を言い土下座してから一時間過ぎていた。


俺とお母さんは、夫妻に言葉はかけなかった。


俺は、これだけ時間が立ち、やっと 夫妻に対して、他人に近い妹に対して、まともな発言をしたと思う。


「埜上さん…」


俺の言葉に、お母さんも俺を不安げに見た。