一度の保証(短編集)

20時


すでに、俺達家族の前には、埜上夫妻が座っていた。


俺のお父さんとお母さんも俺も、客間である畳14畳の部屋の長いテーブルに正座し、座っていた。


お父さんは、あまりに突然の申し出で家にすでに来ている埜上夫妻に少し苛立ちを見せるような日本茶の飲み方をしている。


埜上夫妻の女性が、そんなお父さんを気にも止めず話しはじめた。


「埜上と申します。
お話は、お気づきでしょうが、太一さんの実の妹 えりなの事です。
どうか、えりなを助けて頂きたく、お願いにあがりました」


女性は、揺るぎない瞳を俺達家族に向けた。


お母さんは、黙って話しを聞いていて、お父さんが、夫妻と話しはじめる。


「どうゆう事ですか?話してくださらなければ、お返事のしようもない」


「はい。
えりなは、癌におかされています。
もう 治せないほど進行していて、もって二ヶ月…
えりなは、一歳半の時、高熱で命を落としました。
生還して今があります。
なので、えりなには、もう保証もなく、血縁者に頼るしかなくなりました」


女性は、泣きたいのを堪えて話しているようだった。